海外旅行保険の基礎知識

公開日 : 2022年12月08日
最終更新 :

海外旅行ではアクシデントに見舞われることなく、無事に帰国することがベストだが、外国では想定外のことが起こりがち。旅行中に病気やケガをしたときの医療費や盗難に遭った際の補償などをしてくれるのが海外旅行保険だ。金銭的な補償だけでなく、トラブル処理や現地での日本語サポートなどのサービスも受けられるので心強い。

目次

1.海外旅行保険とは

旅先でのトラブルに備えよう

海外旅行中、環境の変化で体調をくずしたり、ケガをしたり、大切なカメラを盗まれたり……、そんなアクシデントに遭遇することも十分あり得る。最近ではコロナ感染で搭乗機に乗れず、旅行先に足止め…なんて話もちらほらと聞こえてくる。国民皆保険と言われている日本ではあまり保険へ意識は向かない人も多いかもしれないが、外国では日本の健康保険は使えない上、日本に比べ医療費や入院費がはるかに高額な場合が多い。(本当に100万円単位で医療費請求が来るのだ)こうした事態に備えるのが海外旅行保険。インターネット上からも簡単に申し込めるので、旅立ち前に忘れずに入るようにしよう。

海外旅行保険の主な補償項目

海外旅行保険では、旅の間に想定されるアクシデントについて、下記のとおり、さまざまな補償が用意されている。こうした補償があらかじめパッケージになった「セットプラン」のほか、自分の旅先と予算に合わせて必要な補償項目を選択できる「ばら掛け」もネット申込みなどでは可能。

補償内容 補償されるケース
疾病治療費用 病気になった場合、病院での治療費が補償される
傷害治療費用 ケガをした場合、病院での治療費が補償される
疾病死亡・後遺障害 病気が原因で死亡、または後遺障害が残った場合、保険金が支払われる
傷害死亡・後遺障害 ケガが原因で死亡、または後遺障害が残った場合、保険金が支払われる
賠償責任 誤って人にケガをさせたり、物品に損害を与えて賠償責任を負った場合、保険金が支払われる
救援者費用 旅行中にケガや病気で入院した場合、日本から親族などが現地に向かう際の交通費と現地での滞在費が補償される
携行品損害 身の回りのものが盗難に遭ったり、破損などの損害を受けたりした場合に損害額が補償される
航空機寄託手荷物遅延費用 航空機に預けた手荷物の到着が遅れ、身の回り品等を購入した場合、その費用が補償される
航空機遅延費用 航空機が遅延・欠航し、代替機を利用できない場合の宿泊費、食事代等の費用が補償される

2.海外旅行保険の特徴と加入方法

海外旅行保険の仕組みはどうなっているのか。また、何を基準にして保険会社を選べば正解なのか。ここでは、加入方法を含め、海外旅行保険の特徴を紹介する。

保険のタイプと加入方法

海外旅行保険には、基本契約と特約がパッケージになっているセットプランと、自身に必要な補償内容だけに加入するばら掛けプランが存在する。一般的には旅行者に必要な補償がほとんどカバーされているセットプラン加入を購入する旅行者が多いが、無駄な保険料は払いたくない!という人はばら掛けも候補になってくる。
海外旅行保険の加入方法としては、旅行会社のカウンターをはじめ、出発する空港でも申込み可能。また、保険会社のホームページ上からも加入できる。ただ、「面倒だから出発間際に空港で」というのはあまりおすすめできない。なぜなら海外旅行保険の補償対象は自宅出発前から、旅行が終わって自宅に着くまでだから。保険の名前とは裏腹に国内で起きた事故でも補償されるので、なるべく旅行日より前に加入しておいた方がお得なのだ。

クレジットカード付帯保険の「落とし穴」

各クレジット会社のゴールドカードなどには、海外旅行保険が付帯しているケースが多いが、こうした付帯保険には思わぬ落とし穴がある。たとえば、疾病死亡補償が補償されない、補償金額が足りず、差額が自己負担、旅行代金をカード決済していないと付帯保険の対象にならないといったことが起こりうる。また、保険が付帯されたクレジットカードを複数所有していても、補償金額が全て合算されるとは限らない。自分のカードの付帯保険がどんな内容なのか、きちんと確認したうえで、「上乗せ補償」として、海外旅行保険に加入するのがおすすめだ。

保険を選ぶ際の確認項目

以前は、すべての会社の保険料が横並びで同額だったが、現在では状況が変化してきている。特にインターネットで加入すると、カウンターで入るより保険料が安くなる商品もあるので、保険会社のサイトをチェックしてみよう。また、自分が渡航する先に、事故や急病で通院や入院した場合にはキャッシュレス(自分では直接払わず、支払手続きはすべて保険会社が代行してくれる)で、診察や治療が受けられる病院がどの程度あるかという点も、保険会社選びの重要なポイントとなる。なお、現在では、ほとんどの保険会社が24時間日本語サービスを展開している。

3.海外旅行保険の請求方法

ケガや病気をしたり、事故や盗難に遭った場合は、次の手順で保険金の請求を行う

(1)保険会社への通知
事故が発生したらなるべく早急に現地または日本の保険会社の窓口に連絡を入れる。このときに必要な書類について確認しておくようにしよう。海外旅行保険では、事故発生から30日以内など、手続きに期限が設けられているケースが多いので、注意したい。

(2)必要書類の提出
病気、ケガの場合:医師の診断書、治療費の明細、支払いの領収書など
携行品の破損、盗難:警察への盗難届出証明書、第三者の事故証明書など
こちらも書類がないと、保険金の請求ができないので注意したい。多くの場合、保険金の請求は帰国後に行うことが多い。実際には保険金を使用するときは現地で保険会社の係員の指示を受けるため、問題は起きにくいが、必要な内容が揃わないと、帰国後に手間が増えてしまうし、下手すると保険請求ができない危険もあるため、注意しよう。

海外旅行保険の保険金請求に必要な書類の違い

以下は、海外旅行保険の保険金請求に必要な書類の一例だ。各社ごとにケースによってレギュレーションが違うというので、電話などで密にコミュニケーションを取り、必要な内容を把握しておきたい。

●すべての保険金に共通で必要な書類
海外旅行保険保険金請求書

●死亡保険金
保険金の受取人の印鑑証明
死亡診断書、死体検案書
被保険者の戸籍謄本
公の機関の事故証明書 など

●傷害後遺障害保険金
被保険者の印鑑証明
後遺障害診断書
公の機関の事故証明書 など

●治療費用保険金
治療費用の領収書
診断書 など

●賠償責任保険金
事故証明
賠償金請求者からの請求書
領収書 など

●携行品損害保険金
事故証明
購入時の領収証
損害状況が確認できる写真 など

●航空機遅延費用保険金
負担費用の領収書
航空会社からの遅延/欠航証明書
搭乗予定であったことが確認できる書類
搭乗した便が確認できる書類 など

新型コロナウィルスに感染した場合の補償範囲

帰国直前のPCR検査が義務づけられている国などで、運悪くコロナ感染が疑われ、搭乗便に乗れず、ホテルに隔離(しかも自腹)、この場合旅行者は追加の航空券代金と、ホテル代金を払う羽目になってしまう。日本以外でのマスク着用者の割合の低さはご存じの通りのなか、なかなか自身の注意だけでは感染症は完全に防げない。パック型の海外旅行保険の中では旅行中の新型コロナウィルスの①交通費 ②宿泊費 ③旅程変更による交通費、宿泊費 を補償しているものもある。(損保ジャパンの「off!」など)こうした保険に加入しておいた方が安心して旅行が楽しめるだろう。

4.クレジットカードの海外旅行保険

最近では、一般カードでも海外旅行保険が自動付帯しているクレジットカードが多くある。自分が所有しているカードに保険がセットされているか、補償内容はどうなっているのかなどを公式サイト等でチェックしてみよう。そして、付帯している保険の内容と旅行の目的・行程などを考慮したうえで補償が十分であるかを検討し、不足と思われる部分をフリープランの保険で補うなどしてかしこい旅行プランを組み立てたい。

付帯保険には「利用付帯」と「自動付帯」がある

クレジットカードに付帯している海外旅行保険は「利用付帯」と「自動付帯」に分類される。「利用付帯」とは、旅行代金をクレジットカードで支払った場合のみ、海外旅行保険が有効になるというもの。適用条件はカード会社によって規定が異なるが、ホテル宿泊代金や飛行機のチケット代、最寄り空港へのバスや電車といった交通費の支払いに利用した場合もOKとなることが多い。一方の「自動付帯」とは、旅行についての支払いの有無に関わらず、クレジットカード会員であれば自動的に海外旅行保険が有効になるというもの。自分が所持しているクレジットカードに海外旅行保険がセットされている場合、「利用付帯」か「自動付帯」かを確認しておこう。

クレジットカード付帯保険でとくにチェックしたいポイントは次の通り。
(1)死亡・後遺症の補償に比べて治療費補償が少額ではないか?
ケガをした場合、入院や手術を伴う治療では不十分なケースが多い。
病気による死亡には補償がないケースが多い。
(2)賠償責任の補償額は十分か?
レギュラーカードでは2000〜3000万円程度(若者対象のカードはさらに少額)。
現在の世界情勢等から考えて不安はないか。
(3)航空機寄託手荷物や航空機の遅延補償は付いているか?

保険は自分の設定した期間に事故が起こるか、起こらないかの賭けである、ともいえる。クレジットカード付帯の保険だけでいい、と判断するのも自身の責任だが、昨今の世界情勢、感染症の脅威など相対的な保険加入の意味は上がっていると言っていいのではないだろうか。初めて海外に出る方も含め、加入を検討することをおすすめしたい。

文書番号:NH2312-0002

筆者

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